
診察室でご高齢の方がよく訴える不調があります。「以前のように食べられない」「少し食べただけでお腹が張る」「食後は横になりたい」というお話です。年齢を重ねると胃腸の動きが遅くなり、唾液や消化液の分泌も減ることがあるため、何を食べるかと同じくらい、どのように食べるかが大切になります。
食前には胃腸をゆっくり目覚めさせます
食欲がないからといってすぐにご飯を詰め込むより、温かい水や澄んだスープのように負担の少ないもので、先に口と胃腸をうるおしてみてください。薄い果汁も役立つことがありますが、糖尿病がある方や血糖コントロールが必要な方は量を調整する必要があります。お酒は消化に役立つと感じる方もいますが、服用中の薬、肝機能、睡眠状態によっては害になることがあるため、診療時に確認が必要です。
一度に多くより、時間に合わせて適量を
高齢期の胃腸は、急な食べ過ぎや飲み過ぎにうまく対応できないことがあります。食事の時間はできるだけ一定に保ち、一食の量を無理に増やすより、必要であれば間食を少量に分けるほうがよいでしょう。食べ物は熱すぎたり冷たすぎたりしないようにし、脂っこいものや刺激の強い味付けは胸やけや胃もたれを強めることがあります。
- ご飯とたんぱく質のおかず、加熱した野菜をバランスよく組み合わせます。
- 十分に噛めるよう、食事のペースをゆっくりにします。
- 入れ歯や義歯を使用している場合は、噛み合わせと痛みを定期的に確認します。
- 食後の歯みがきと義歯の洗浄を習慣にし、口腔衛生を保ちます。
食後は横になるより軽く動きます
食事が終わってすぐ横になったり深く眠ったりすると、胃の内容物が長くとどまり、息苦しいような不快感が生じやすくなります。体の状態が許すなら、家の中や廊下をゆっくり歩き、お腹を温かく包みながら楽に呼吸してみてください。顔と腹部をやさしくさする動作は、緊張を和らげ、食後の不快感を減らす助けになることがあります。
病後の回復期はより慎重に
風邪や手術、腸炎などを患った後は、食欲が戻っても胃腸機能が完全には回復していないことがあります。食べたいものが出てきても、最初はやわらかく消化しやすい食べ物から少量で始めてください。普段服用している薬のために胃が不快でも、自己判断で中止せず、処方した医療スタッフに相談する必要があります。
このようなときは受診をおすすめします
- 最近、食事量が減り、体重が目に見えて減少するとき
- 飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、黒い便や血便があるとき
- 新たに起こった強い腹痛や、続く胸やけがあるとき
- 胸の痛み、冷や汗、呼吸困難を伴う場合は、まず119または救急外来を利用してください。
高齢期の食事は、胃腸を急かす時間ではなく、体のリズムを見つめる時間であるべきです。小さな一口のスープ、十分に噛む習慣、食後のゆっくりした歩みが積み重なると、食事の負担はかなり減っていきます。消化不良を繰り返す場合は、体質と服用中の薬、口腔状態、生活リズムをあわせて確認し、ご自身に合う方法を見つけていきましょう。
